背景

 

かつて白砂青松の三保松原は、潮害や防風、飛砂から農地や住居、生活を守るため、先人の人々の思いと手により、植林し間伐補植などの維持管理が日常的に行われて来ました。

日々の生活の中では、落葉は堆肥、枯枝は燃料として利活用するなど、マツは人々の生活の中で大きな役割を担ってきました。

しかし、戦後、燃料は化石燃料に変わり、堆肥は化学肥料に変わるなど、生活様式の変化と伴に、人々とマツ林との関りが薄れてきました。

一方マツ林は、落葉や枯枝の堆積、雑草、雑木の繁茂により土壌の富栄養化、過密化が進み、安倍川上流域の川砂の採取による砂浜の減少など、松の生育に適さない環境へと変わりつつあります。さらに近年はマツ枯れ被害(マツ材線虫病)が恒常化し、気候変動がもたらす異常気象や大型化する台風による高潮被害などマツの生育環境はますます厳しい状況にあります。

現在、行政によるマツ材線虫病の防除、老齢大木の樹勢回復や除伐・間伐、海岸の侵食対策が実施され、地域住民や保全活動団体、企業等による捕植、松葉掻き、除草除根などが行われていますが、マツ林保全活動全般に関する計画や知識、情報が十分に共有されていないため、地域社会が一体となって三保松原の日常的・専門的な管理を行う公民連携による新たな管理体制の構築が求められています。